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Interview

経営者紹介

【関西イキザマ図鑑】#40 ご縁を紡ぐ地域の喫茶店 | en+(エンプラス) 大脇佳奈さん

氏名

事業名

設立

経歴

私は大阪府箕面市で生まれ育ちました。大和大学保健医療学部を卒業後、病院に勤務し作業療法士として1年間働きました。リハビリの現場では、病気や怪我によって日常生活が制限される方々に寄り添い、心の通ったコミュニケーションを重ねる中で、人との関わりの奥深さを学びました。作業療法士という仕事は私にとってとてもやりがいのあるもので、姉や祖母の存在が進路を決める大きなきっかけにもなっています。
一方で、ダウン症を持つ姉が退職したことを機に「一緒に働ける場をつくりたい」という想いが芽生えました。その思いを胸に、作業療法士の仕事を辞めてバリスタ専攻の2年制専門学校に通い、卒業後に独立しました。学校に通う傍ら、実際にカフェで働き経験を積む日々を送りました。
趣味は音楽を聴くことや、自然豊かな場所へドライブすること、そして昔ながらの喫茶店を巡ること。人と関わる時間を大切にしながらも、自分自身の心を癒すひとときを日常に取り入れることを大事にしています。私の仕事のモットーは「人のために」。誰かが心地よく過ごせる場をつくることこそが、今の生き方の原点になっています。

事業内容

私が運営する「en+(エンプラス)」は、大阪府箕面市にある喫茶店です。地元の人たちにとって身近な憩いの場でありたいと願い、ドリンクを中心に、軽食やデザートなども幅広く取り揃えています。「日常の中で気軽に立ち寄れる安心感」を大切にしています。店の目の前にはスーパーがあるため、主婦の方やご年配のお客様が買い物の帰りにふらっと立ち寄ってくださることも多くなってきました。
また、当店は飲食の提供だけにとどまらず、就労支援施設との連携にも力を入れています。具体的には、施設でつくられた食器や器、食パンなどを仕入れて使用しており、今後は雑貨やアート作品などの展示・販売も行っていきたいと考えています。
「en+」は単なる飲食店ではなく、人と人、地域と地域がつながり合う存在を目指しています。食事やコーヒーを楽しむだけでなく、新しい出会いや発見が生まれる空間でありたいと願っています。

創業きっかけ

開業を決意した背景には、私の家族の存在があります。ダウン症の姉が勤めていた職場を退職したことを知ったとき、私は「姉が生き生きと働ける場を一緒につくりたい」と強く思いました。
もともと作業療法士として人々の心や身体に寄り添ってきた中で、日常の中に小さな癒しや安心の場があることの大切さを知りました。そうした経験もあり、私自身の好きなカフェという場で、障害のある方々の支えになるような取り組みができればと考えるようになりました。

開業を決めるまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。
周囲に相談することはあまりせず、自分の想いを優先して準備を進めていったため、開業を知った家族や友人たちは驚きの反応を示しました。それでも、次第に応援の声が増え、「あなたらしい選択だね」と背中を押してくれる存在に支えられました。
私は作業療法士の仕事が好きで誇りを持っていました。しかし、その経験を手放すのではなく、これからのカフェ運営に生かすことができると信じました。リハビリ現場で培ったコミュニケーション力や気づきの力は、接客や空間づくりに大いに役立っています。お客様一人ひとりと心を通わせられるカフェをつくりたいという想いが、創業の原動力になりました。

理念

店名の「en+(エンプラス)」には、いくつかの想いを込めています。まず「縁」は人と人とのご縁を大切にすること。「園」は誰もが安心して集える憩いの場でありたいこと。「援」は互いに助け合い、支え合う気持ち。そして「円」は平和で調和のある空間を表しています。これらの意味を重ね合わせ、「en+」という名前に決めました。これまでの出会いに感謝し、これからまた新しいご縁が広がることを楽しみにしています。
お客様からいただく言葉や、日々の会話は、私にとって学びや気づきの宝庫です。
「en+」は、ただコーヒーを提供する場所ではなく、地域の人たちがふらっと立ち寄り、会話を楽しみ、ちょっとした心の拠りどころになれるような存在を目指しています。そして、就労支援施設との連携を通じて、障害のある方々の作品や取り組みを地域の人に伝え、「誰もが社会の一員として役割を持てる」ということを形にしたいと考えています。
人と人、人と地域が自然につながることで、そこに小さな優しさや喜びが広がっていく。そんな循環を生み出すことが、私の理想とする「en+」の理念です。

今後展望

今後は「en+」を地域に根付いた存在としてより多くの方に知っていただきたいと考えています。そのために、お客様一人ひとりとのコミュニケーションを大切にし、常連さまを少しずつ増やしていくことを目標としています。
ご来店いただいた方が「ここに来ると心地よい」と感じてくださるよう、丁寧な接客や細やかな心配りを続けていきたいと思います。
また、就労支援施設との連携をさらに深め、障害のある方々が手がける食材や作品をより多く取り入れていきたいです。店内での展示や販売を通じて、その魅力を多くの方に知っていただき、社会とのつながりを広げる場にしていくことが夢です。お店を訪れることで「誰かの生き方や想い」に触れられるような仕組みを整えたいと考えています。
個人的な夢としては、家族や大切な人との時間を大事にしていくこと。お店の運営と同じように、支え合いながら穏やかで温かい関係をつくっていきたいです。
「en+」を通じて、地域と人、人と人とが自然に結びつき、誰もが心穏やかに過ごせる場を広げていくことが、私のこれからの目標です。

コメント

大脇さんの「en+」には、“人のために”という一貫した想いが込められていることが強く伝わってきました。作業療法士として培った「寄り添う姿勢」を、今はカフェという形で地域に広げている。その原点にはご家族、とくにダウン症のお姉様への想いがあることが、非常に印象的でした。

「ご縁」「園」「援」「円」という多層的な意味を重ねた店名からも分かるように、カフェを単なる飲食の場にとどめず、地域の人が自然につながり合い、優しさや喜びが循環する拠点にしようとするビジョンが見えます。就労支援施設との連携も含めて、社会に“プラス”を生み出そうとする取り組みは、まさに彼女ならではの挑戦だと感じました。

「ここに来ると心地よい」と思える場所は、地域にとってかけがえのない存在です。大脇さんのこれからの歩みが、箕面の街にどんな温かな景色を描いていくのか、とても楽しみです。

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